ソーラーエネルギー
太陽光パネルの設計とは?【後編】
前編では地形シミュレーションの緻密なお話を伺いましたが、後編では「建物の強度」について伺います。

編集部(以下、編):最近は住宅の耐震性への関心も高いですが、重いパネルを載せることへの影響はどうお考えですか?
岡本さん(以下、岡本):非常に重要なポイントです。実は新築の場合、昨年から構造計算に基づいた設計が必須になっています。ハウスジャパンでは、将来的にパネルを載せる・載せないに関わらず、パネルの重量がかかっても「耐震等級3」を維持できる設計をあらかじめ行っています。
編:あらかじめ備えておくのですね。では、既存の建物に載せる場合はどうなるのでしょうか。
岡本:昔の建物であれば、当時の設計事務所に確認をとります。「これだけの重量が載っても大丈夫か」という検証です。もし構造的に厳しいという実例があれば、無理に載せることはしません。無理をして載せて、家の耐震性を損なっては本末転倒ですからね。
編:なるほど。最近は「ペラペラの薄いパネル」も話題ですが、あれはどうですか?
岡本:次世代のパネルですね。ただ、最新のものはまだ耐用年数が10年程度と短いのが課題です。今の主流であるガラス製パネルは、30年ほど持つ耐久性があります。最近は「タンデム型」といって、曇りや赤外線でも発電できるような、日本の特許技術を応用した新しい素材も出てきています。窓ガラスや車に太陽光パネルが組み込まれるような未来も、そう遠くないはずですよ。
編:技術の進化もすごいですが、それを支える「架台(かだい)」、つまりパネルを固定する台の設計も岡本さんがされているんですよね。
岡本:ええ。実はここが一番「命に関わる」部分なんです。以前、ある施設での設計図面を見た際、強風が吹くとパネルがポテトチップスのように浮き上がってしまう計算結果になったことがありました。すでに基礎工事が始まっていて設計変更が難しい状況でしたが、建物自体の重さを「重り」として利用するアンカー工法を提案し、コストを抑えつつ安全性を確保したこともあります。
編:風で飛んでいかないための「風圧計算」までされるのですか?
岡本:もちろんです。例えば倉敷なら基準風速は32メートル、積雪量はこれくらい、というデータをもとに、用途係数を建築基準法の最低ラインより1.3倍ほど高く設定して計算します。もし施工不良や設計ミスでパネルが飛んで事故が起きれば、それは施工した会社の責任になります。リスクを最小限にし、お客様に長く安心して使っていただくためには、安全へのコストは惜しみません。
編:安さだけで選ぶのは危険、ということですね。
岡本:見積もりを取ると、極端に安いメーカーもあります。でも図面をよく見比べると、柱の数が少なかったり、地面を支える杭が足りなかったりする。「安いのには理由がある」んです。私たちは複数のメーカーを比較し、「ここなら雪が積もっても折れない」「この構造なら強風に耐えられる」と確信できる、安全なものだけをチョイスしています。
編:海外メーカーと国内メーカーの違いについても、アドバイスされるのでしょうか。
岡本:はい。例えばHUAWEIなどの海外勢は保証期間が長くコストも抑えられますが、「中国製は少し不安」というお客様もいらっしゃいます。一方で国内メーカーは安心感がありますが、コストは上がります。そこはメリット・デメリットを丁寧にお伝えし、お客様に納得して選んでいただくようにしています。

編:岡本さんは最初から太陽光パネルの設計をされていたわけではないと伺いました。以前は全く別の業界にいらしたとか?
岡本:そうなんです。実は20年近く、写真業界で画像処理や撮影の仕事をしていました。Photoshopが世に出始めた頃から使っていて、当時はまだフィルム全盛期。OSも今のものとは比べものにならないくらい古い時代です。
編:写真から設計へ、かなり大きな転身ですね。
岡本:当時はまだデジタルカメラが普及し始めたばかりでしたが、「これからはデジタルの時代になる」と確信していました。写真の補正を毛髪一本単位でこだわってやっていたのですが、その「細部へのこだわり」は今の設計にも活きていますね。建築写真の撮影もしていたので、建物をまっすぐ歪みなく撮る技術や、そのための機材の知識も、今の仕事のルーツになっています。
編:そこから、どのような縁でハウスジャパンで太陽光の設計をすることになったのでしょうか。
岡本:50歳を過ぎた頃、転職を考えていた時に縁あって入社しました。最初は営業マンとしてスタートしたんです。ちょうど10年ほど前に「固定買い取り制度(FIT)」が始まった頃ですね。当時は野立ての太陽光発電のコストが非常に高かったのですが、あるメーカーの工法を参考に、より強固でコストも抑えた「最強の架台(かだい)」を自分で作り出そうとしたのが設計にのめり込んだきっかけです。
編:営業から、自ら設計までこなすようになったのですね。
岡本:はい。当時は現場で職人さんがその場の判断で組んでいるようなケースもありましたが、「これでは根拠がない、危ない」と感じたんです。風圧計算を繰り返し、クランプ(固定金具)一つが何キロの荷重に耐えられるか、柱をどこまで深く打ち込めば飛ばないか。徹底的に調べて、自分たちなりの「根拠のある設計図」を作り上げました。
編:独学でそこまで極められたのは驚きです。
岡本:好奇心ですね(笑)。「なぜできないのか」「どうすればより良くなるのか」を突き詰めるのが好きなんです。地形シミュレーションにしても、影の影響やトラブルが重なった時期に、「もっと精密な提案をしないとお客様のためにならない」と痛感し、とことん勉強しました。今は蓄電池の時代。常に新しいマニュアルを吸収し、最新の技術をいち早く設計に反映させるようにしています。
編:岡本さんにとって、この仕事の醍醐味は何でしょうか?
岡本:やはり、自分が試行錯誤して作り出したシミュレーションが、最終的に完成された図面になり、それをお客様に納得して契約いただけた時ですね。他社と同じ提案はしたくない。「ここならこれがベストだ」と自信を持って言える根拠のある提案をして、他には負けないものを作る。それが一番の喜びです。
編:与えられたツールを使うだけでなく、自ら作り出す。そのクリエイティブな姿勢が、ハウスジャパンの太陽光発電を支えているのですね。ありがとうございました。