ソーラーエネルギー
太陽光パネルの設計とは?【前編】

太陽光パネル設計担当の岡本さんにお話を伺いました
こんにちは、ハレとイエ編集部です。先日、公開した太陽光パネルの設計というお仕事について、非常に面白い内容だったのでより深掘りして、お仕事内容を伺いました。
編集部(以下、編):今回は、ハウスジャパンの太陽光パネル設計の裏側について詳しくお話を伺います。太陽光発電の設計といっても、単にパネルを並べるだけではないそうですね。
岡本さん(以下、岡本):ええ。まず地面や山に設置する場合、パネルを配置する前の「地形把握」が、設計の精度を左右する最も重要な工程になります。まず国土地理院の等高線データを取り込み、パソコン上でその土地の傾斜や傾向を100分の1スケールで完全に再現することから始めます。地形を正確に再現できて初めて、専用ソフトでのシミュレーションが可能になるんです。
編:デジタル上で土地そのものを再現してしまうのですね。そこからどのようにパネルを配置していくのでしょうか。
岡本:地形に沿ってパネルを配置する際、最も気を遣うのは「影」の影響です。周囲にある家や木などの障害物をすべてシミュレーション上に作り込み、その地域の緯度に基づいた正確な太陽の動きと照らし合わせます。過去の気象データも参照しながら、いかに効率よく、その土地のパフォーマンスを最大限に引き出せるか。何通りものパターンを試行錯誤して、回路の組み合わせやレイアウトを追い込んでいくのが、設計士の腕の見せ所ですね。

実際の設計画面を見せてもらいました
編:発電効率を高めるために、どのような工夫をされているのですか?
岡本:一つは「過積載」の設計です。例えば、パワーコンディショナの容量が50kWだとしたら、あえてパネルを100kW分載せるといった手法です。天気が良い日のピークカットは発生しますが、朝夕や曇天時の発電量を底上げできるため、トータルの発電量は圧倒的に多くなります。天気が悪くてもいかに稼働させるかという組み合わせの最適解を見つけるのが、この仕事の大切なところです。
編:自家消費型の設計では、単にパネルを載せるだけでなく、その企業の「電気の使い道」まで踏み込む必要があるのですね。
岡本:その通りです。例えば「この設備なら電気代を3、4割削減できますよ」というシミュレーションが出たとします。でも、その会社にお休みが多い場合、休日は電気が余ってしまい、せっかくの発電を捨ててしまうことになる。稼働率が7割で3割がムダになっているようなら、それはシステムとして多すぎるということなんです。
編:屋根や土地にパネルを載せるといっても、ただ並べればいいというわけではないのですね。
岡本:たまに、屋根に対してただパネルをボコボコと並べているだけのケースも見かけますが、実際には角度の設計が非常に重要なんです。パネル自体の重さに加え、風圧や雪の重さを考慮した強度計算が欠かせません。例えば、雪が多く降る地域でパネルを平らに設置してしまったら、雪が滑り落ちずに大変なことになってしまいますから。
編:地域の気候に合わせて、角度を細かく調整する必要があるんですね。
岡本:その通りです。土地を有効に使うには傾斜角10度くらいが効率よく並べられるのですが、発電効率を考えると、もう少し角度を上げたほうがいい場合もあります。岡山県内であっても、南部の平野部と雪の多い北部では最適な角度が違いますし、方角によっても変わります。例えば南向きなら25度くらいがベストですが、東向きならもう少し平らに近いほうが効率が良い、といった具合です。
編:角度が低すぎることによるデメリットもあるのでしょうか。
岡本:あまりに角度が低いと、雨が降ってもパネル表面の汚れが流れ落ちず、結果として発電効率が悪くなってしまうんです。だからこそ、その場所で太陽がどう動くのかを地形シミュレーションで正確に把握することが不可欠です。「この土地は少し斜めだから、過去のデータと照らし合わせるとどうなるか」といったことまで、すべてデジタル上で検証できてしまいます。
編:太陽光発電は、1日の中でも時間帯によって波がありますよね。そのあたりも設計でカバーできるのですか?
岡本:はい。太陽は朝昇って昼にピークを迎え、夕方に沈みます。発電量もそれに合わせて山なりのカーブを描くのが理想です。一日の発電量をいかに満遍なく、かつ最大化できるか。シミュレーション上で太陽の高さとパネルの角度をミリ単位で突き詰めることで、その土地、その建物にとっての正解を導き出しています。
編:設計業務の大半は、こうしたITを駆使したシミュレーションの時間になるのでしょうか。
岡本:そうですね。かなりの時間をシミュレーションに費やします。ただ、経験を積んでくると、建物の規模や形を見ただけで「大体これくらいだな」というアタリがつくようになります。データベースにある膨大な組み合わせから最適なものを選び出し、シミュレーションを通じて「これがベストだ」という確信を得るプロセスは、設計の醍醐味ですね。
編:そこまで緻密に行うのは、現場でのズレをなくすためですか。
岡本:ええ。もし障害物などの現地状況を考慮せずに「いくらで載りますよ」とだけ提案してしまうと、実際には想定通りに発電しなかったり、効果が低かったりといったトラブルに繋がりかねません。私たちは、周囲の障害物との関係や影響を、シミュレーション上で忠実に再現します。
編:そこまで徹底してシミュレーションを使いこなしている会社は、他にあまりないのでしょうか?
岡本:メーカーの方からも「このソフトをここまで使い切っているんですか?」と驚かれることがありますね。でも、そこまで徹底的に作り込むからこそ、他社との差別化ができます。その分、作成する図面の量もかなり多くなりますが、現場に近い状態をどれだけ正確に再現できるかが、お客様の信頼に繋がると信じています。
次回に続きます